向日市議会「ビラ配布者を処罰する条例を否決!」
2010年 社会民主党 飛鳥井佳子

 向日市長は、空き缶やタバコのポイ捨てや犬のふんの放置の禁止を目的とする「まちを美しく条例」にかこつけ「印刷物等の散乱防止」の為として、ビラ配布者にも2万円を支払わせる条例を提案した。
 しかし、9月22日、最終本会議において、賛成11名、反対11名の可否同数となり、議長採択で否決となった。
 唯一、反対討論にたった社民党の飛鳥井佳子市議の討論を紹介します。



 原案に反対の立場で討論します。
 長野県諏訪市を訪問しましたら、ステキなタバコのポケット灰皿とか、ゴミ袋の入ったケースとか、いろいろいただきました。以前、本会議でもご紹介させていただいておりますが、「捨てたごみ 痛みませんか 良心が」「きれいなまちはマナーから」とか書かれていて、空き缶、タバコの吸い殻のポイ捨て禁止。ペットのふんや釣り具用品の適正処理の啓発。各種イベントでの宣伝、諏訪湖の浄化推進などを市民部生活環境課が、年間46万円の予算で、環境美化推進事業をされていました。

 また、水質浄化対策として河川や湖の水質調査や浄化実験、蛍の育成などに116万円かけておられました。

 向日市は、川や池の浄化のための事業とか、釣り具用品のこととか、全く入っていない条例で、これでは欠陥条例です。何のグッズもつくらず、罰金だけでことたれりとは実に手ぬきです。美しい諏訪市は観光メッカで、さすがだと思いましたが、ここに「印刷物の散乱防止」なんてのは全くありません。なぜなら、日本国憲法上、これは美化事業といっしょくたにしてはならないことがらなので、まともな市は、こんなことはやっていません。

 ですから、この条例は単なるマナー条例と異なる、他の市民活動への抑圧、民主主義への暴力、自主的な商業活動の妨害が混在しているので、反対です。

 それはまず、9条の「印刷物等の散乱防止」です。
 これを見ましたとき、ジョージ・オーウェルの本を思い出しました。

 この本「1984年」は、恐るべき管理社会を描いた全体主義的近未来小説であまりに有名で、今年、早川書房が11回目の再版、東大の高橋和久先生の新訳で出しています。
ぜひ読んでほしいものです。

 この本の国では、<憎悪週間>があり、為政者の「ビッグブラザー」という権力者が人々を監視しています。町中に巨大なポスターで「ビッグブラザーがあなたを見ている」の大きなキャンペーンが行なわれ、ヘリコプターまでが家々の中を見張り、テレスクリーンですべての私語は拾われ写し出される。「思考警察」が個人の回線に勝手に接続してくるので、すべての物音は盗聴され、最後はどんな人も権力に従うようになっていくという話ですが、やっぱり私、感が良いんですね。向日市のこの条例はオーウェル「2010年」版でした。

 9条について、本会議の初日に私、質問いたしました。例えば、おこのみ焼屋さんとかが、がんばってビラをつくり、駅前で配布された。それを受け取った人がチラッと見て、ホームとか道端とか、もう何駅か先で電車を降りてから捨てられたとしたら、配布者にそんな責任を負わせるのはおかしいのではないか?いったい、そのおこのみ焼き屋さんは、どこまで拾いにいかなあかんのか? その責任は、自らビラをもらって、それを捨てた人にあり、この条例が一人歩きすると自由な商行為を妨害することになる。おこのみ焼き屋さんも税金を払ってくださっているのに、こんなビラ条例はおかしい。との主張をいたしました。

 ところが、上田市民部長は「配布者にも責任がある」とおっしゃいました。これはまさしく日本国憲法に抵触する問題発言です。

 もしこれが、本当に単なるマナー条例でしたら、上田市民部長は、「そういう場合、配布者に責任を問うことはありません。」と明確におっしゃるはずです。私はそうおっしゃるものと確信していました。だってこれは「マナー条例」だと軽く考えていたからです。

 しかし、そうではなかった。どうもただごとではない、あやしい条例です。
 委員会でも問答無用のあくまで処罰の方針をかたくなにつらぬかれたのはなぜか?上田部長さんのソフトな人柄からしてとても不自然です。私が、ビラの回収範囲について質問しますと、上田部長は「目で届く範囲くらいのことです。」と軽くおっしゃる。しかし、そのことは条例にも書いてないし、いまだ規則も見せてもらっていない。私は「条例が一人歩きする恐れがある。向日市内とか府内とか、日本国中までビラを拾いに行けない。」と申し上げました。

 小さな商店に2万円は、1日中働いて稼いだお金より大きい金額かもしれません。もし、商売がたきの店が、相手のおこのみ焼き屋さんを倒そうと思えば、相手のビラを集めて駅や公園にまいておけば、行政が後日、しっかりいやがらせを手伝ってくれるわけです。

 「そんなところにビラをまいていません。」と言っても「証拠がある」とビラを見せられ、泣く泣く2万円を払う。こういう店が増えて、向日市で商売をやる人がますますなくなっていく。うっかり「マナー条例」だからといわれて通してしまったら、向日市が全国に先がけて、とんでもない人権侵害の町で有名になっては困るので反対します。

 創意工夫されたビラを勝手にゴミ呼ばわりするのは、たいへん失礼なことです。有名なのは激カラ商店街とかだけで充分です。

 市長には、正直に、この条例のねらいが「九条」にある。政治弾圧のためのものである。ことを白状してほしいと思います。

 わざわざごていねいに、このビラ配布者をとりしまる条例は「九条」、憲法「九条」の「九条」を使うなんて手が込んでいますね。シラーッとした顔で何を考えておられるのかと思えば、「九条を守ろう!」へのあてつけですか?

 ブラックユーモアを考えているヒマがあれば、もう少しましな政治をなさると、貴方への批判ビラも減るので、そちらの方向へ、まともな方向へ頭を使ってください。

 市長には美しくないビラでも、市民にとっては大事な生命の情報が満載なんです。人様が苦労しておつくりになったもので、市民がいただかれているものを、市長が横から「必要な指導だ」と2万円取っていく。「ビラをまくことは悪いこと」と印象づけ、戦時中のように犯人探し、自警団のような目で市民が市民を裁く、恐ろしく息苦しい社会は決して「美しい国日本」ではなく、「えん罪だらけの国」になってしまいます。いやがらせそのものです。

 厚労省の村木厚子さんのえん罪をつくった検事が、昨日逮捕されましたが本当に日本は恐ろしい国です。間違われて犯人にされ、後ろ指さされる人や、思い込みで鬼の首を取ったように騒いで喜ぶひどい人が、いっぱい出てくることでしょう。

 えん罪にされた人は、もちろん、市長を訴え、裁判をしなくてはなりません。市長はおきらいな裁判所に通うはめになります。

 性善説に立った人間社会を認めない方々は、性悪説に立って死刑を容認し、どれだけ罪もない人々を殺したことでしょう。アフガンでは、小さな罪でも石打ちの刑で公開処刑です。アフガンのように、えん罪の犠牲者をつくる市民が市民を罪人にしていく、ビラの配布をした人を処罰させようと思えば、わざと受け取り捨てることが横行し、よけいにゴミが増えます。あくまで「捨てた人を処罰」するのでなければおかしいのです。この条例は全く非常識です。

(中略)

わずかの人数のパブリックコメントで、これはさっさとやるが、巡回バスの二度にわたる請願や署名は無視というのは、行政の一方的なやり方です。それでも少数意見を尊重して、犬のふんとか、ポイ捨てに2万円の罰金がどうしてもやりたいというなら、「勝手にどうぞ」と不愉快ですが自分はめったにそんなことをしない私達は「マナー条例だから」と賛成することもできます。

 しかし、「マナー条例」と全く関係ない大切な個人の印刷物をターゲットにするのは、何度も申しますが、憲法上の思想・信条・良心の自由や結社の自由とか、いろいろな人権を奪う恐れがあり、えん罪も予想され、とても認められません。

 建設環境常任委員会の当日に、二本も修正案が出るようなお粗末なしろものですので、もう一度、行政は顔を洗って出直すべきです。「マナー条例」くらい全員一致で挙手してもらえるようなものをおつくりになれない、無能なのか、悪意なのかよくわかりませんが、もう少しましな仕事をしていただきたかったと思います。

 言いたいことは山ほどありますが、時間のつごうで、このへんで終ります。